三崎山

＝真澄記＝ 
酒田から持ってきた手形をあらためて、吹浦の関を通った。鳥崎の浜、瀧の浦を通り、女鹿（めが）の関になって手形を渡し、椿が茂る岩を下って三崎坂に来た。 
慈覚大師の御堂は、もがさ（痘瘡ほうそう）、麻疹（はしか）から守るとして、子や孫のため沢山の人が詣って、うずくまっている。

関

＝真澄記＝ 
川袋という浜を経て関村に来た。この関村こそ、いにしえの「うやむやの関」だろう。 
三崎山の地獄谷のあたりにあったとは、人の言い過ちではないか。 
小川二つ渡って右の方に岡がある。白砂のこの高いところは鳥耶杜（とやもり）と言うそうで、「とやとや鳥のうやむやの関」なのだろう。 
＜うやむやの関由来＞

汐越付近

＝真澄記＝ 
橋の上から島がいくつも見える。通行人は「八十八潟九十九杜と言う。 
干満珠寺の西の「袖かけ松」のあたりに行けば、風の音が騒がしく、あられや雨も降ってきた。 
目に入る島々はみんな曇って、紅葉の色だけが薄く残っている。

真澄：象潟から鳥海山

真澄は象潟で数日雨と風にたたられますが、それでも合間をぬって島々を巡ります。 

今は海岸の隆起で、真澄が見た海に浮かぶ島々の面影はありません。 
田の中に浮かぶ小山を見て、当時を偲ぶしかないのですが、象潟の町はそれでも静かにたたずんでいます。
＜象潟の島巡り＞

蚶満寺山門

＝真澄記＝ 
蚶（赤貝のことで「さきがい」とも言う）という貝が多いのでキサカタと言い、きさ満る寺として蚶満寺と称すべきを、神巧皇后の古きに「潮干るに、潮満つに、、」にたとえて干満寺と称した。

＜蚶満寺縁起＞＜願掛け桜＞＜親鸞腰掛けの石＞＜北条時頼の歌＞

飛の海岸

＝真澄記＝ 
汐越を出て「飛」というところに来た。昔、陸奥の「塩釜」のひとつが飛んできたとして、今神とあがめて村も「飛」としたそうだ。 
沖の飛島が波間に浮かんでいる。

＝真澄記＝ 
河に橋がかかっている。水が少なく、砂が多い河だが、これを渡ろうとして足を入れれば、沼田のように深く入って、多くの旅人が命を失ったそうだ。 
もし渡ろうとするなら、土地の詳しい人を案内にたてるべしと言われたそうだ。 
また、ここには塩を焼くところがあり、土地の名がわかる。

本荘市内を眺望

玉ノ池八幡宮

黒沢の駅

前郷の神明社

真澄は天候を待って矢島に三日間逗留します。 

ここでは汐越から来たという商人から奈曾の白滝の素晴らしさを聞き、自分が観て来れなかったことを悔やみ、また秋田の名産「はたはた」を堪能します。 
左は矢島鉄道八島駅、右は矢島を流れる子吉川 

＜はたはた＞　＜奈曾の白橋＞

真澄は雪が降る悪天候で幾度も足止めに合いながら、山を越え、舟に乗って進みます。 
見るだに恐ろしい谷を、人の手に助けられながら越え、きこりから道を教えられながらたむろ澤村に着きます。 
左は基点となる伏見の鳥海川、右は八木山峠からの鳥海山 

＜雪の八木山越え＞

矢島を越えて、雄勝西馬音内（にしもない）に到着、雪道を踏んで杉宮の三輪神社に詣でています。
また、真澄はここで大家族の古家に逗留したようで、暮らしぶりや秋田雄勝の方言に興味を持って耳を傾けています。 

＜逗留の家＞　＜三輪神社縁起＞　＜雄勝の方言＞

西馬音内（にしもない）から湯沢方向へ雄物川を越えると柳田です。 
ここで草氏に長逗留し、正月を迎え春までの間雄勝各地を遊覧しています。 
「秋田の刈寝」では正月の湯沢まで、それ以降は「小野のふるさと」で記録しています。 

＜雪垣と雪おろし＞　＜かんじきの由来＞

真澄：かまくら（粉本稿）

雪深い雄勝の里の子供達も元気いっぱいです。 
＝真澄記＝ 
「はきぞり」といって、二尺の細い木に綱をつけて、首からかけて軒ひさしの上からいくたびも下って遊ぶ。 
犬が高雪をつたって屋根へ上れば、子供もはせ上る。 

屋より高く雪を積んで、大きな穴を掘り、その中で笹のともし火を炊いて、色んな話をする「かまくら」で遊んでいる。 
夜になって「きどころ寝」（服を着たままのうたた寝）をし、親に「せやみ起きろ、風をひくぞ」と叱られている。